剣舞とは

剣舞とは、居合道・剣道・柔道などの武道武術の要素と、日本舞踊・能といった伝統舞踊が混交した伝統芸能で、日本刀を用い舞うことを通して、武士道を体現するものである。

 

闘いに勝つために古来より練り上げられた武術の動きをベースとして、日本的情緒を舞の繊細で豊かな表現力と「侘び寂び」の世界観で伝える点に特徴がある。

 

日本刀を用いず舞扇だけで上演する詩舞(しぶ)と合わせて「剣詩舞(けんしぶ)」と称し、舞扇のみで上演する詩舞(しぶ)は、衣装や佇まいは剣舞の様式を取り入れながら、扇子のみで表現するため、さらに柔らかで豊かで繊細な表現を可能としている。

 

剣舞は、武道武術の流れと芸能芸術の流れのふたつの発祥の交差点に発生した、つまり、武道でありながら芸道でもあるという、稀有な存在の伝統文化・伝統芸能である、と考えることができる。

 

剣舞の歴史的な起源は古く、奈良・平安時代には舞楽や神社の神楽があり、中国(漢代)にも剣を持った舞があったことが伝えられている。

現代の剣詩舞に欠かせない詩吟(しぎん)とは、漢詩・和歌・俳句・新体詩・現代詩など、様々な詩に節をつけて歌う邦楽で、詩の内容をとらえ、その心情や情景など、詩の作者の気持ちを表現する。

 

詩吟に合わせて舞う現代の「剣舞(けんぶ)」の様式は、明治維新後に剣士・榊原健吉が始めたと伝えられており、その後は、鹿児島出身の日比野正吉と、高知出身の長宗我部親が剣舞を芸道としてまとめたと言われている。

その後は、さまざまな流派が生まれ、広がっていったとされ、舞扇のみで上演する詩舞(しぶ)が加わり、さらに情緒的な表現力が備わっていったと考えられている。

戦前から戦中にかけては、詩吟や剣舞が日本軍の士気高揚の一部として利用された経過から、戦後期に途絶えた流派も多かった。

しかし、財団法人日本吟剣詩舞振興会の発足により復古・隆盛し、吟詠・剣舞・詩舞が芸術的に統合され、舞台芸術化された。

現代では舞台芸術としての芸術性が追求されるようになっているが、まだまだその知名度は低い状況である。

紋付き袴というシンプルな武士の装束で舞うことを継承している伝統芸能として、見た目は地味ながら、武士道の思想性を背景とした今後の普及には、期待が大きいと言われている。

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