武士道とは

剣舞の背景のひとつである武士道には、特定の教典や教義はなく、明確な定義は存在しない。時代に応じて、様々なとらえ方があるのが「武士道」の特徴であるとさえいえるが、あえて大きく二つの考え方(a)に絞ると、次のとおりとなる。
(国際日本文化研究センター教授笠谷和比古氏の説による(https://www.athome-academy.jp/archive/culture/0000001105_all.html))

①鎌倉時代、武士の台頭とともに「戦に勝つ強い者が武士のあるべき姿」とされた武士道。
②江戸時代以降、戦のない天下泰平の世の中で、統治階級としての武士のあり方を追求した武士道。

現代人が思い描いている武士道は、②の方が圧倒的に多いと思われるが、それは新渡戸稲造によって1900年(明治33)1月、米国フィラデルフィアのリーズ・アンド・ビドル社より出版された『BUSHIDO~THE SOUL OF JAPAN』の影響が大きい。

 

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Cover for Bushido: The Soul of Japan, 1900(出典:Wikipedia(日本語版)武士道(新渡戸稲造)

https://ja.wikipedia.org/wiki/武士道_(新渡戸稲造))

新渡戸稲造は本書の中で、日本の伝統的な道徳教育についての考えをまとめ、日本文化の紹介書として世界各国の言語に翻訳されることとなった。世界中の読者の中でも、熱心な読者として有名な人物に、アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトやジョン・F・ケネディ、ボーイスカウト創立者のロバート・ベーデン=パウエルなどが、挙げられる。『BUSHIDO~THE SOUL OF JAPAN』は、多くの海外の読者を得た後、明治41年(1908年)日本語訳が出版された。
『BUSHIDO~THE SOUL OF JAPAN』には、多くの功績があるが、一方では武士道を美化し過ぎとの指摘もある。しかし、武士道を世界に向けて、思想的に分かりやすくまとめたことは、特筆すべき功績であったと言える。

武士道は、歴史的には神道・仏教・儒教が強い影響を与えており、高い精神性を目指す世を統べるリーダーを目指す思想性を備えているが、第二次世界大戦当時、日本軍の指導に用いられたことで、第二次世界大戦後は、全否定される存在となったことがある。現代では、武士道への抵抗感は薄れつつあり、むしろ好意的に受け止める風潮が主流となってきている。その証拠として、近年では、武士道や武士に関する書籍の出版数が増加しており、時代の後押しが強くなってきていると言える。